白い巨塔 (1966) ★★★★

とにかく前半の壮絶なポスト争いはおもしろい。テンポも抜群。田宮二郎は、オレの記憶にある晩年のわりに硬派な雰囲気と、初期の、勝新映画「悪名」(1961)のモートルの貞で観たギラギラしたチンピラ役とのギャップが埋まらなかったんですが、この「白い巨塔」の財前役は、ちょうどその中間ぐらい。エリートではあるが、岡山の貧しい農家出身という設定が非常に自然に演じられています。ただ、後半の裁判劇はもう一つか。工作合戦もさすがに食傷気味に感じる。

それに、財前が悪のように描かれているけど、冷静に考えるとそんなに悪人でもない。実力のない者が工作・買収でのしあがるなら悪だけど、財前は外科医としての腕前は誰もが認める超一流で、医師としては教授になって当然の人材だったわけで。それが、学問業績上の理由でなく、「スタンドプレーが多くて傲慢だから」なんて理由で教授昇進を阻まれようとするんだから、むしろ、「出る杭は打たれる」式の日本的風土の犠牲者であるとさえいえる。また、財前と対照的な人物として描かれる清廉な里見助教授も、最後の方では、なんか偽善的に感じられた。

と、いろいろ不満を書きましたが、おもしろかったです。映像、演出、脚本、演技などもうし分ありません。ただ、手術シーンをあんなに直接的に、しかもしつこく観せる必要はあったのかと…。