EMIがiTunes StoreでDRMなし配信

以前ジョブズApple.comに「Thoughts on music」という異例の長文コラムを「寄稿」して、うちでも、「ジョブス「レコード会社はDRM放棄を」提言の真意は?(2/9/2007)」や「DRMなしのオンライン配信を模索する動き(2/11/2007)」で話題にしました。その時点では、「ジョブズお得意のブラフじゃねーの?」という意見も多かったようですが、ついにこれが正式に発表されました。ある程度予想されたとはいえ、いざ実現となるとびっくりです。

 AppleiTunes Storeはこのプレミアムダウンロードを最初に提供するオンライン音楽ストアとなる。iTunes Storeで提供されるEMIのDRMフリー楽曲は、従来の2倍の音質のAACフォーマットで提供される。価格は1曲当たり1.29ドルで、ユーザーはDRM付きの曲を99セントで購入することもできる。アルバムは価格据え置きでDRMフリー版になる。
 iTunes Storeで販売されているAAC楽曲は通常は128Kbpsのビットレートだが、DRMフリー版は256Kbps。Appleスティーブ・ジョブズCEOはDRMフリー楽曲の販売を「ワールドワイドで5月中にスタートする」とし、「年内にiTunesで販売するうちの過半数がDRMフリーになる」と述べている。
 DRM付きの楽曲あるいはアルバムを購入済みのユーザーは、1曲30セントでDRMフリー版にアップグレードできる。

EMI、全楽曲を「DRMなし」に――iTunes Storeで販売 - ITmedia ニュース

素晴らしいですね。これですよ、音楽ファンが望んでいたのは。EMIというとどうしてもセックス・ピストルズの「EMI」を思い出してしまうけど(笑い)、EMIは偉いね。日本でもこれが始まるかは不透明ですが、東芝EMIは英国EMIに買収されたので見通しは明るいかと思います。てゆうか、日本はレンタル天国で、レンタルにはDRMもなく垂れ流しなのに、音楽配信P2P悪の根源だなんて捉えるのがそもそもおかしいんだよね。

ちなみに日本といえば、前回とりあげた「Complete My Album」について、Nikkei.netで以下のように報道されています。

米アップルは音楽配信サービス「iチューンズ・ストア(iTS)」で、アルバムの販促策を導入した。アルバム収録の一部の曲を購入済みの場合、残りの曲をまとめて安く入手できる。iTSを手がける22カ国のうち、日本を除く21カ国が対象となる。

Nikkei Net: アップル、アルバム配信で販促策・日本除く21カ国で

なっさけないねえ、日本。iTS参加22カ国で日本だけが除外だなんて。業界の民度の低さが伺えます。

話を戻して、今回のEMI/Appleの発表はAsahi.comではかなり長文の記事が書かれています。

インターネットを介した音楽配信に大きな影響を与えるサービスが始まる。英レコード大手EMIグループが、曲の複製防止技術を使わない販売を、米アップルの音楽配信サイトを通じて5月にスタートする。互換性がうまれ、利用者は様々な携帯音楽プレーヤーで再生できるようになる。EMIとアップルはサイト利用者以外への販売機会増加を期待し「開放路線」をとる。

Asahi.com: iPod以外もOK EMI、コピー防止なしで音楽配信

流通改革に関して消極的な新聞業界にしては珍しく、Asahi.comはどういうわけかiPod/iTunes Storeに関しては親アップルの記事を多く書いていますね。

さて、今回の件の華々しい報道に隠れて、地味に以下のような関連ニュースが出ています。

 欧州委員会が、大手レコード会社とAppleが欧州での音楽販売を制限している疑いで調査を調査を行っている。同委員会の広報官が4月2日、明らかにした。(中略)
 「消費者は自身の居住国のiTunes Storeからしか音楽を買うことができない。従って音楽を購入する場所を制限されており、結果として購入できる音楽と価格を制限されている」と欧州委員会広報官ジョナサン・トッド氏は述べた。
 Appleは、汎欧州ストアを提供したいが、音楽会社の要求により制限されていると語った。
 「Appleはかねてから、EU加盟国のすべての人がアクセスできる単一の汎欧州iTunes Storeを運営しようとしてきた。だが、レコード会社や音楽出版社から、彼らが当社に与える権利に法的な制限があるとの忠告を受けた」と同社は声明文で述べている。

Expired

よしよし、風が吹いているぞ。欧州内に限らず、iTunes Storeに「国境」がある(=居住国のiTunes Storeでなければ利用できない)のは、文化の問題じゃない、ビジネスの問題です。文化活動においてビジネス利権が文化よりも優先されるという屈辱的な状況は改善されなければなりません。汎欧州ストアの実現はそう難しくはないでしょう。この欧州内の問題が世界的な問題へ波及してくれることを願ってやみません。

以上。