レイザーラモンHGのことが気になってしょうがない時期がありました。オレはテレビを持ってないのですが、レイザーラモンHG見たさにMac用のTVチューナーを買おうかとまで思ったぐらいです。
個人的に、ゲイ関連の文化には興味あるんですよ。熱心に追っている訳ではなく、また、ゲイカルチャーどまんなか(ゲイ雑誌やゲイ文学、ゲイクラブなど)にはあまり興味がないんですが、「総合文化芸能全般の中にまぎれこんでいるゲイカルチャー」というものには少なからず興味があります。どこかつるんとした感触のゲイカルチャー独特の美的感覚がとてもおもしろいと思うんです。
で、その延長線上でレイザーラモンHGに興味を持ったわけなんですが、初めてHGの存在を知ったとき、おお、これは新しい!と思ったのです。日本のゲイ系芸能人といえば、これまでどうしても「おねえ系」が中心で、どうもゲイといえばおかまというイメージが強かったんですが、それを「ハードゲイ」という芸風をもってして打ち破るという点でレイザーラモンHGは新しい。
海外では、古くは70年代から80年代に活躍したヘヴィーメタルバンド、ジューダス・プリーストのボーカリスト、ロブ・ハルフォードや、
80年代に「YMCA」などでヒット曲を飛ばしたヴィレッジピープルのメンバーのグレン(写真右下)、
90年代初めに「I'm Too Sexy」のナンバーワンヒットを飛ばしたライトセッドフレッド
などなど、「ハードゲイ」キャラの芸能人の歴史は散発的ながらも脈々とオーバーグラウンドに存在してきたわけですが、日本では初であるように思います。
ちなみに、「ハードゲイ」というのは和製英語だと思うんですが(てゆうか、英語版wikipediaで「Hard Gay」で検索するとレイザーラモンHGの項目が出てくるのには笑った→http://en.wikipedia.org/wiki/Hard_Gay)、かなり前から使われていた単語であるように思います。オレの理解では、レザーなどを身にまとってマッチョさを押し出すタイプを指すのではないかと思われます。
で、「おねえキャラじゃない初のゲイキャラ」ということでHGに注目していたんですが、最近、低画質ながらもまとまった映像を観ることができたので感想を書きたいと思います。
全般的な感想としては、「予想した範囲内のおもしろさだった」ということでしょうか。期待を裏切られることもなかった一方で、期待以上のものもなかった。わりにあっさりしたキャラなんですよね。それはやはりレイザーラモンHGこと住谷正樹がゲイじゃないからというところに尽きるんじゃないかと。
動きや存在感は完璧。元々学生プロレス出身ということで、身体も美しいし、動きも俊敏。HGキャラを構築するためにゲイクラブに赴いて研究したということで、腰の動きも完全にマスターしている感じです。そして何よりも長身で顔立ちが精悍なのが良い。かつ声も良い。「どうもー、ハードゲイでーーーす」という登場の瞬間がいつもカッコイイ。
しかし、あんまりいやらしさのようなものはないのよね。それは本人がゲイじゃなくてあくまでゲイキャラだということもあるし、また本人の生真面目さもあると思う。この人は同志社を中退せず卒業して生活協同組合に就職してから脱サラして芸能人になったわけだけど、同志社という関西でトップの私大をきっちり卒業して生協という固い職業を選んでいるあたり、根がマジメなタイプなんだと思う。で、今回いろいろ動画を観て、グラサンと帽子をとったところも観ることが出来たんですが、グラサンと帽子を取るとゲイっぽさはどこへやら、非常に素朴な体育会系好青年となり、そのギャップが意外性があっておもしろいと思うと同時に少々がっかりしたりした勝手な視聴者のオレでありました。
でも逆に、その「非ゲイ性」ゆえにレイザーラモンHGはブレイクしたとも言えるんですよね。だって健康的だもん。腰の動きは卑猥だが、存在感にセクシャルなところがまったくない。実際、下ネタはほとんどないし、男に言い寄ったりする行動も実に儀礼的、表面的。だから結局、ハードゲイを自称はしているが「変な服を着て変な踊りをする芸人さん」というところに落ち着いているんだな。で、滑舌がよくてはきはきとしゃべるから妙に健康的で、ちびっ子にも人気が出る、と。
ということで、厳密な意味では「日本芸能界のゲイキャラクターのブレイクスルー」とは言えないとは思いますが(だってゲイじゃないから)、それでも「ゲイといってもおねえキャラとは限らない」という点を表層的にでも一般に認知させることに成功しているという点では意義深いんじゃないかと思います。ぜひ頑張ってほしいですね。本人も行っている通り寿命が短そうなキャラではありますが。
いじょ。