アイデン&ティティ (2003) ★★★★

みうらじゅんボブ・ディラン世代なので、もっとフォークな話かと思いきや、80年代終わりの「バンドブーム」の時代の話で、その時代にアマチュアバンドをやって吉祥寺&高円寺でくだまいていたオレには、そのリアルなボンクラさに頭がクラクラする思いだった。おまえはオレか!みたいな。もちろんオレはデビュー寸前まで行くというようなことはまったくなかったし、それゆえギャルにもてたこともまったくない、「真のボンクラ」だったけれども、主人公ぐらいの立ち位置のバンドはわりに身近だったし、それ以前に、あれぐらいの立ち位置のバンドは、オレレベルの低位置のバンドとボンクラ度は大差ないのだった。途中、なんとなく美談になりそうでいてなりきれないところがまたリアルにボンクラで、ほっとすると同時に、「だから何?」という気にもなったのも事実。リアル・ボンクラは自分だけで十分っす。

ちなみに、主人公中島のnerdyな風貌やどこか貧乏臭い曲などから、なんとなく、くるりの岸田を思い出してしまったが、岸田は中島の苦悶をひょいと超えて成功している。岸田は天才だから当たり前と言えば当たり前なんだけど、結局音楽は才能だな、中島は才能が足りなかっただけだなと身もふたもない真実だけが浮かび上がって来て、「ロックとは」と大上段にかまえて考える中島が哀れにも思えてくるあたりもどこか虚しい。

そういった虚しさをするめのように味わうための映画。好作品。