カミュなんて知らない (2006) ★★★★

予備知識無しに観たが、けっこう問題作。

映画を制作する大学生たち(+大学教授)を描いた群像劇。群像劇にありがちだが、台詞が説明的なため、映画的というより演劇的な展開。登場人物の描写はうまく、すんなりと入り込める。で、色んな人間関係が現れては消え、現れては消えるのだが、それぞれが意味ありげでいて、見事にどこにも結びついていない。唯一一貫しているのが馬鹿馬鹿しいほど漫画的なキャラの吉川ひなので、この映画はこのキャラにまつわるエピソードのみ筋が通っている。一方、「意味ありげだが実は無意味」大賞をあげたいのが大学教授(本田博太郎)。次点がこの映画の主人公と言える前田愛。前田のキャラはこの映画でもっとも悩み、なにかにイラだっているのだが、このキャラにまつわる数多いエピソードからは「悩み、イラだっているのだな」ということ以外何も浮かび上がってこない。

ただ、ラストシーンはけっこうショッキングかつクレバーで、強烈なインパクトがあった。でもこれにしたってよくよく考えると、クレバーというよりアンフェアなだけなんじゃないかと思ってしまう。

でもでも、もしかしたら監督はすべてを織り込み済みでやっているのかもしれない。内容が皆無でも、思わせぶりな演出と映像のテクニックだけで、観客を惹き付ける映画はできるんですよと。意味ありげだけどありげなだけの、エンタテインメント映画ですよと。しょせん映画は人工物、虚構なんですよと。それだったらすごい。それぐらいからっぽな映画。