柿柳さんところの院生の就職についてのエントリーは、柿柳さんらしい意図的に極論めかした問題提起ですが、あえて無粋に反応すれば、
研究業績はあまり重要項目ではない、ということ。誤解を招かないように言っておくと、研究業績はある程度は必要。しかしほとんどの研究はたいしたことがない（せいぜい学会の内部で受けるに過ぎない）ので、大学教員には別の資質を求めた方が良い
という一節に対してあえて反応したいですね。やっぱり業績が大切、と。
というのも、業績がとても多い人というのは、結局、割に人付き合いも問題なかったりすると思うんですよ。例えば、柿柳さんがおっしゃっている
休み時間や懇親会での行動も重要。全く１人で佇んでいたり、懇親会に来なかったり、隣に座った人と全く話さなかったり、こんな院生が多すぎる。こりゃ、学内の仕事は頼めないね。学会の仕事も無理。せいぜい強力な師匠の力でおこぼれをもらうだけだね。人脈が広がらない。
というのは、業績が多い院生にはあまり当てはまらないという印象をオレは持っているのですよ。一年に複数回学会発表する院生は、それだけで顔を覚えられて話しかけられやすくなるし、また、実際そういう積極的に発表する院生はそれなりに学会発表を、自分を売り出す戦略の一環と考えているので、割りに社交的であると思いますね。逆に、業績の少ない院生は懇親会でも引きこもりがちです。
てゆうか、かつてオレがそうだったし（汗）。
オレも全然指導教官に学会での立ち振る舞いなどについて指導されなかったし、それ以前にメインの指導教官は学会行かない人だったし、オレも割と内向的なんで、まさに上記の柿柳さんが描写するような駄目院生でありました、アメリカにて。業績も少なかったし。
しかし、就職を考えるころになって、恐ろしく高い壁が立ちはだかっていることを知り、なんとか打破しなければとあせるようになりました。また、近隣の日本人院生の間でオレの存在がほとんど知られていない事実にも愕然としたり。
ちなみに、アメリカでも年寄りの偉い先生は古き良き「学者は研究さえやってれば良い」的な時代を生きてきたわけで、そういう「How to survive the academia」というノウハウは一切教えてくれませんが、若い先生は熾烈で激しい競争に現在進行形でさらされているので、「学会はsocializeするための場」と断言したりしていました。
そういう言葉を聞いて、なるほどそういうものかと思うも、実際の話、無名な院生にとって学会でsocializeするのは非常に困難なものです。院生が学会でsocializeするための良い方法はただ二つ。多くの人が読むメジャーなジャーナルに論文を載せてあらかじめ名を覚えてもらうか、その学会で発表するかです。で、メジャーなジャーナルに論文が採択されるより学会発表が採択される方が一般にずっと簡単なので、やはり学会発表が人脈広げるもっとも手っ取り早い方法ということになります。
学会で発表すれば、懇親会で人脈を広げるのは発表しない場合よりはるかに簡単になります。なぜなら、初対面の院生や偉い先生とでも会話しやすいからです。相手が自分の発表を聞いてくれていればそのネタだけで話が続きます。聞いてなくても、今日発表したことを話題にすれば、たいていの人は関心もってくれます。
また、発表者ならば相手も名前あるいは顔を覚えてくれやすくなります。オレも今は立場が変わって、見知らぬ院生から話しかけられる立場になりましたが、発表者ではない院生に懇親会などで声をかけられて知り合いになっても、半年後や一年後に再び話しかけられたとき、やっぱりたいてい忘れていることが多いんですよね、顔も名前も。人間の記憶力というのはかくもあやふなものなのかと。一方、発表者と懇親会で知り合いになった場合は忘れにくいですね、やっぱり。学会発表というのは顔と名前と研究内容がセットで20分ほど聞き手の時間を独占できるわけですから、考えてみれば強力な自分プロモーションになるわけです。
というわけで、結局業績だと思うんですよ。業績多い人はひきこもらないし、対人関係でもどん欲であることが多いのではないかと。学会発表の場数を踏めばプレゼン能力も上がるしね。必ずしも大メジャー学会でなくてもいいんです。最初のうちは誰でも通るような小さいところからどんどん応募すればいいんです。小さな学会でも有名な先生の一人や二人は来ているわけだし、近隣大学の院生は来るし、情報交換も人脈開拓もできます。逆に発表しなければやっぱりキツいと思いますよ、懇親会で知り合いつくるのも。
柄にもなく偉そうなことを書いてしまいました。でも院生でなくなった今のオレも駆け出しには違いないわけで、やっぱり状況は同じなんですよ。あでも、職をゲットした今、人脈広げすぎると様々な無給の仕事が舞い込んでくるのであまり広げない方が良いかもしれん…。
